税理士になるためには、税理士試験に合格する必要があります。税理士試験は科目合格制となっており、試験科目は会計科目2科目と税法科目9科目の11科目あります。
この11科目のうち必須科目などを含め、5科目に合格することにより、はれて税理士として登録することができます。試験の概要についてはこちらを参考にしてみて下さい。
しかし、税理士登録できる道は税理士試験に合格することだけではありません。実は、色々な手段により税理士登録をすることができます。その中で税理士受験者のなかで税理士試験を五科目合格するべきか大学院に卒業して、科目免除により税理士になるべきかの議論があります。
今回は、この大学院卒業による科目免除について考えていきます。
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税理士試験に合格しなくても税理士になるための方法とは?
資格により税理士試験免除の方法とは?
弁護士は、無試験で税理士として登録することができます(弁護士法3条2項)。弁護士はあらゆる法律により精通する必要があることから税法科目を有する税理士試験は免除されるようです。
また公認会計士については、従来は、弁護士と同様、無条件で税理士として登録することができた資格の一つでした。しかし法改正により、平成29年4月1日以降の公認会計士試験合格者は、税法に関する研修を修了した公認会計士についてのみ、税理士資格を得ることができるようになりました。
国税従事による税理士試験免除の方法とは?
国税従事による税理士試験が免除される方法があります。税務署に勤務し経験した職域とその期間に応じて、免除される科目が段階的に増えて行きます。
細かな制度により定められていますが、10年又は15年以上税務署に勤務した国税従事者は、経験した職域に応じて税法に属する科目が免除されます。また、23年又は28年以上税務署に勤務し、指定研修を修了した国税従事者は、会計に属する科目が免除されます。
しかしながら、新人の税務職員の話によると、この制度は現行の中堅税務署職員にとっては有効ですが、新人税務職員にとっては近い将来この方法もなくなるという説明を受けたという話もあり、国税従事による免除の方法もなくなるかもしれません。
また、税理士になったから将来安泰という資格でもないため、そのまま税務署などで定年を迎え、引退後、税理士になるというスタンスが主流のようです。
無試験で税理士になれる時代もあった ダブルマスターとは?
難関な国家試験の一つといわれている税理士試験。実は、一昔前までは、一定の条件下のもとで税理士試験に一度もチャレンジしなくても税理士になることができた時代がありました。
大学院を2つ卒業することで税理士登録ができた
かつては、大学院を2つ卒業することで、無試験で税理士になることができた制度がありました。これが、税理士資格におけるダブルマスターと呼ばれる制度です。
例えば、法律学の修士、または財政学の修士の学位を取得することができれば、税法科目に関する試験が免除となりました。さらに、商学修士の学位を取得すれば、会計学に属する科目も免除でき、これを利用することで無試験で税理士になることができました。
金持ち・2代目税理士のための優遇策として平成14年4月に改正
無試験で税理士になれてしまうこのダブルマスター制度。これは、当時の税理士業界でも金持ち優遇や2代目税理士のためなどとかなり批判されてきた制度だったようです。
よって、平成14年4月以降から改正された税理士法により、2つの大学院を卒業しても会計学とそれぞれある科目のうち、1つでも合格しなければならなくなりました。
税理士試験免除組は試験合格組にしたら負け組なのか?
税理士試験の税法科目や会計科目はどの科目の合格率は8%~15%です。どの試験科目もハイレベル必至。となると試験5科目合格で税理士資格を取得した人は難しい試験をクリアした猛者です。
彼等にとっては、昔のダブルマスターや大学院卒業して試験科目免除した税理士を負け組税理士と思うようです。しかし、果たして試験科目免除組の税理士は駄目な税理士なのでしょうか?
税理士業務は5科目合格しなくても出来てしまう時代
5科目合格者は基本的に税法科目、会計科目を丸暗記や計算問題を手が麻痺するほど説いてきます。税理士の業務をするうえでは税法を理解することや計算が出来ることはとても重要です。
しかし、現在では税法の条文はネットで検索をすれば、出てくる時代ですし、計算も基本コンピュータがやってくれる時代ですので、丸暗記や計算が必ずしも必要ではありません。
もちろん、条文や計算方法が知識としてあることは業務を行ううえでアドバンテージがあります。
大学院卒業組が学んで5科目合格者が学べないこととは?
一方の大学院卒業者は何を学んでいるのでしょうか?私も大学院卒業組ですが、決して2年間を遊んでいたわけではありません。
そもそも、大学院を卒業したら自動的に試験科目免除になるわけではなく、大学院の卒業論文を国税庁に提出し、免除通知を頂く必要があります。
この論文を書くために、税法のみならず、過去の裁判の結果の資料を集めたり、税法をどのように読み解くのか、税法をどのように使うのかを様々な著書から学習をしていきます。
丸暗記ではなく、税法を組み立てていかに使えるツールにするのかを大学院で学んでいきます。実務を行ううえで丸暗記することは重要ですが、その丸暗記した条文を使いこなすことができなければ、その丸暗記の作業も無駄になってしまうのです。