年金だけでは老後資金は2000万円不足するという金融庁の報告書が明るみに出て以来、将来への不安・不満を訴える声が強くなっています。
さらに追い打ちをかけるように、2019年8月に公表された財政検証では年金が現状よりも2割目減りするという衝撃な結果となりました。
勝ち組の老後を目指すために自ら老後資金を準備する必要があります。今回は、現段階において最強の税優遇制度のiDeCo(イデコ)を紹介します。
最強の税優遇制度のiDeCo(イデコ)とは
老後資金を作るために有効な手段はiDeCo(イデコ)です。このiDeCoは、老後資金の不足を補うため国が肝入りで用意した制度です。毎月一定額を「掛け金」として金融機関に預け、投資信託などの金融機関で長期運用します。
60歳まで引き出せないが、それが老後資金の形成の強制力となる
20歳から60歳までが対象で、原則60歳までお金を引き出せませんが、それがかえって強制力となり、老後資金を作るための方法としては現時点で最強の方法といっても過言ではないでしょう。このiDeCoは民間の金融商品では考えられないお得な仕組みが多く揃っています。
2017年以降、専業主婦でも加入できるようになってから徐々に人気を集め、加入者は2019年6月時点で127万人を突破しました。
老後2000万円問題によりiDeCoはさらに注目が集まる
昨今の「老後2000万円問題」によりiDeCoの人気はうなぎ登りです。楽天証券の6月のiDeCoの申込数は前月比2倍、SBI証券やマネックス証券も同1.5倍に伸びたとされています。
楽天証券によれば、特に40代以降の女性の申込が増えており、さらに比較的若い世代も、老後を意識し始めた人が増えているそうです。
iDeCoが全会社員が加入できるように厚労省が改正の方針
今夏に厚生労働省はiDeCoの加入窓口を大きく広げるように改正を予定しています。
そもそも年金には、大きく分けて「公的年金」と「私的年金」があります。
公的年金は、国に毎月保険料を払い、65歳以降に受け取る年金のことをさします。一方、私的年金は、会社が掛金を拠出する「企業型確定拠出年金」や個人が加入する「個人型確定拠出年金(iDeCo)」などがあります。
これまでは、会社に企業型確定拠出年金が導入されている人は、原則iDeCoへの加入が認められず、会社が拠出する金額以上の掛金を積み立てられませんでした。
これでは、税優遇を充分生かしきれないデメリットがあったのですが、厚生労働省は、すべての会社員がiDeCoを併用出来るよう制度を改正する方針です。
iDeCoの人気の最大の理由は3つの税優遇制度とは
iDeCoの人気の理由は3つの税優遇制度にあります。具体的には以下のとおりです。
- 掛け金全額が所得控除の対象となること
- 運用益が非課税になること
- 受け取る際にも税金の控除が受けられること
① 掛け金全額が所得控除の対象となること
1つ目の掛け金による所得控除によって税金がどれほど安くなるのか見ていきましょう。
会社員や主婦は月に2万3000円、自営業の人は月に6万8000円までお金を拠出することができます。
例えば、年収120万円のパート主婦が、月2万円を積み立てた場合、1年分の掛け金24万円を所得から差し引いて所得税と住民税が計算されるため、その分税金が安くなります。本来納める3万500円が無税の0円になります。
さらに、夫がiDeCoに加入した場合、その節税額はもっと大きくなります。
年収500万円の夫がiDeCoに毎月2万3000円を掛けた場合、節税額は年間5万5200円となります。前述の妻の分も合わせると、20年間で夫婦2人の節税額は合計171万4000円にもなります。
② 運用益が非課税になること
通常、株式などの運用で得た利益には約20%の税金がかかりますが、iDeCoは非課税となります。
上述の夫婦が年3%の利回りで20年間運用した場合、元本1032万円が1408万円になります。通常であれば、運用益376万円には20%の約76万5000円が課されますが、iDeCoであれば手許に残ることになります。
以上を踏まえるとiDeCoを利用すれば約547万円も得することになります。
③ 受け取る際にも税金の控除が受けられること
60歳でiDeCoの給付を受け取る場合、一時金として受け取る方法と、分割して受け取る2通りの方法があります。
一時金として受け取る場合「退職所得控除」が適用されることとなります。20年なら800万円、30年なら1500万円と、積立期間に応じて非課税枠が決まります。
分割して年金形式で受け取る場合も、「公的年金控除」が適用されることとなります。たとえば、公的年金も含めた収入が65歳未満なら年間70万円、65歳以上なら120万円までなら所得税は課されません。
さらにiDeCoでは長期投資のメリットを享受することができる
長期投資で得られる2つのメリット
iDeCoでは、長期投資のメリットも見逃せません。
どんな時も毎月一定額を買い続けることで、相場が高値の時は少し買い、安値の時には必然的に多く買うことができるため、購入単価が平均化され、結果的に高値づかみを避けることとなります。
毎年の利益が元本とともに翌年も再投資されることで雪だるま式に運用益が膨らむ「複利」効果も見込めます。
どんな商品で運用するかが肝心
長期投資は、日々の市場変動に一喜一憂せず、利益を大きく膨らませることができる方法です。利益を生み出すためには、どんな商品で運用するかが肝心です。
肝心の商品選びですが、長期的に期待できる平均的な利益率を示す「期待利回り」をひとつの目安にするとよいでしょう。
歳が増すほどリスクを抑える運用しよう
満期までの運用期間が長い40代までは、期待利回りが6%前後の商品で、少々リスクを高めに取って運用してよいでしょう。
50代に入ったら5%前後にリスクを落とし、子どもの教育資金などに備えるようにしましょう。
さらに60歳に近づいたら、3%以下にリスクを抑え、安定的な運用を心がけるようにしましょう。