ワイドショーや週刊誌でも取り上げられるようになった相続税。すでに消費税に続き身近な税金となりつつあります。
そして、多くの情報媒体において相続税対策で有効なのは非課税枠内での暦年贈与と紹介しています。もちろん、非課税枠内での贈与も有効ですが、デメリットもあります。
実は、あえて贈与税を払うことで最終的に相続税を含む全体の税額が最小に出来る可能性があります。今回は暦年贈与よりもさらに効果的な「最適暦年贈与金額」による暦年贈与を紹介します。
Contents
相続対策に有効な暦年贈与とは?
相続税対策に有効な暦年贈与とは?
暦年贈与とは、毎年毎年、財産を贈与によって移していく方法をいいます。生前に財産を他の個人に財産を移すことにより、それだけ相続時の財産が減り、相続税の負担が軽くなります。
相続税対策には様々な方法がありますが、贈与税の申告書を出す以外は、特に税務上の手続きが必要ないため手続き面の負担も考えると相続税対策において有効な手段といえます。
なお、贈与額が基礎控除額の範囲内の贈与であれば、申告書を出す必要もありません。
贈与にかかる税金はいくら?
ある個人が他の個人から財産の贈与を受けた場合、その個人が1年間に贈与を受けた金額に応じて贈与税が課されます。これを一般的に暦年課税といいます。
この暦年課税では、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた金額が基礎控除(110万円)を超える場合に贈与税がかかり、その税率は、以下のように金額に応じて段階的に引き上げられる超過累進税率となっています。
なお、基礎控除は贈与者ごとではなく、贈与を受ける者ごとに110万円ですので注意が必要です。
暦年贈与は相続税対策の王道!?110万円の非課税の有効活用
暦年贈与は、相続税対策の代表例として様々な場面で用いられています。これは、他の相続税対策と比べて手続きが簡便であることは上述のとおりですが、一番は年間で110万円までは非課税で財産を移転できるといったメリットによるところが大きいといえます。
暦年贈与のデメリット・注意点とは
しかし、上図の表でもわかるように一度に多額の財産を贈与すると最高税率55%(一般贈与3,000万円超の場合)が課されるなど、相続税よりも税負担が重くなります。
また、贈与者の財産規模が大きい場合や贈与者が高齢で贈与期間を長くとれない等の場合には、おおきな節税効果を得ることができませんので、なるべく早い段階で暦年贈与を行うことが相続対策のひとつです。
最適な相続税対策をするなら最適暦年贈与金額での暦年贈与も検討しよう
非課税枠内での贈与が必ずしもベストな対策とはいえない
相続税に関しワイドショーや雑誌でも取り上げられることとなったため、巷では、相続税も身近な税金となりつつあります。
世間一般的には、非課税枠(110万円以下)での贈与が認知されていますが、必ずしも非課税枠内での贈与が最適とは言えない場合もあります。
最適暦年贈与金額による暦年贈与でさらに対策効果大
財産はいずれ、贈与か相続によって相続人らに引き継がれることとなります。贈与した場合には贈与税がかかりますし、相続した場合には相続税がかかることになります。
ですので、それらの贈与税と相続税の合計額を最も小さくすることが、税負担を最小にすることになります。その方法が最適暦年贈与金額による暦年贈与なのです。
最適暦年贈与金額による効果とは?
では、具体的な例をもって最適暦年贈与金額による効果を見ていきましょう。
最適暦年贈与を用いた具体例
- 保有財産は1億5,000万円の預貯金(亡くなるまで財産の変動はなし)
- 法定相続人は子のみ(遺留分の問題は考慮しない)
- 暦年贈与する期間は15年
上記のような前提条件として、
- 暦年贈与しない場合
- 毎年110万円で暦年贈与を行った場合
- 毎年「最適暦年贈与金額」で贈与をした場合(上記の条件の場合 年510万円づつ贈与)
税額をまとめると以下の表のようになります。
110万円を超えて、10万円ずつ暦年贈与金額を増やしていくと、贈与金額が510万円で、贈与税額と相続税額の合計が最小になります。このときの税額合計が上表のとおり1,300万円となり、基礎控除範囲内での暦年贈与した場合よりもさらに税額合計を減らすことができます。
さいごに
いかがだったでしょうか?贈与というとどうしても110万円以下で行わなければならないという固定概念がありますが、最適暦年贈与金額で贈与することであえて贈与税を払った方が最終的な税額が抑えられる可能性があります。
もちろん、今回のシミュレーションは判りやすくするために単純な条件で行っていますので、簡単におこなっていますが、実際の相続対策では、様々な条件が組み込まれるのは必至です。ですので、あなたにとっての最適暦年贈与金額を知りたい、相続で心配でしたら、あなたに合った最適な税理士に相談しましょう。