2019年8月27日に年金の給付水準に関して重要な見通しである「財政検証」が発表されました。将来、どれくらい年金がもらえるのか、その見通しを5年に1度公表しています。
前回の財政検証では、6月に公表されていましたが、今年は7月に参議院選挙があったことが影響したのか、8月になっての公表となりました。
少子高齢化が進む中、年金は、経済が成長しても目減りが避けられないという厳しい見通しとなりました。今回は、財政検証について紹介します。
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財政検証は公的年金の給付水準の見通しを示す重要な指標
厚生労働省が発表した財政検証。そもそも財政検証とはどのようなものでしょうか?この財政検証というのは、5年に1度、公的年金の給付水準の見通しを示す、重要な指標です。
標準的な経済成長では所得代替率は50%維持は可能
財政検証によれば、経済成長が続く標準的なケースでは、夫婦2人のモデル世帯では約30年は給付水準は抑制され年金額は実質的に2割近く目減りするという見通しとなりました。
しかし、現役世代の収入に対する年金額の割合を示す所得代替率は50%は維持できるとしています。
厚生労働大臣は100年は年金は大丈夫というが果たして・・・
根本厚労大臣は、「経済成長と労働参加が進めば、引き続き所得代替率50%以上を確保できることを確認した」と記者会見で述べ、続けて「おおむね100年間の給付と負担が均衡し持続可能」と発言しました。
100年は安心といわれた年金。果たしてどこまで老後は安心できるのか疑問です。
財政検証から判った将来もらえる年金額とは?
財政検証の結果、将来の年金が一体いくらもらえるのかをまとめたのが以下の表となります。
なお、このモデルケースは夫が会社員で妻が専業主婦とした場合で2040年代以降に夫婦でいくら年金がもらえるかを示した表となります。
なお、現在の支給水準は22万円です。この数字は夫婦の基礎年金と夫の厚生年金を合わせた金額となります。
支給水準額よりも所得代替率が重要な指標となる
しかし、重要な指標となるのは、支給水準ではなく、所得代替率です。この所得代替率というのは、現役世代の収入の対比であり、その時の男性の平均手取り額に対し、年金では何%もらえるかという指標です。なお、現在では61.7%となります。
まず、厚生労働省がベースとする標準的成長である場合、この所得代替率は50.8%となると見込んでいます。現在と比べると10%以上も下がっています。一方で、支給水準額は24万円と増えている形になっています。これは何を示しているのでしょうか?
支給水準額が上がっても物価上昇率が上がれば実質年金は目減りする
実額で考えれば増えていますが、実は喜んでばかりはいられないのです。この24万円の支給の前提は物価上昇率が1.2%としており、現在の物価水準で考えるとなんと約18万円ほどとなり約2割も目減りした結果となるのです。
では、高成長で経済が推移した場合、いくら年金はもらえるのでしょうか?財政検証によれば、もっとも高成長したとしても所得代替率は51.9%と標準で推移した場合とそこまで変わりません。
高成長の期待は薄い!マイナス成長の経済も現実味
しかし、高成長時の物価上昇率が2.0%としており、この数字は黒田日銀総裁が当初から掲げている数字ですが、未だ達成の余地はありません。現実的に考えれば、難しい数字と言えます。
また、マイナス成長で推移した場合、所得代替率は36%~38%となり、経済成長はマイナスを迎えていることから2052年には年金積立金160兆円は運用が難しいため枯渇するという計算になります。
しかし、現在の年金制度では、所得代替率が50%を下回った場合、年金制度をそのものを抜本的に見直すということになっています。
年金額の目減りは必至 考えられる対応策 オプション試算とは
このままいけば、年金が目減りすることはほぼほぼ間違いはないといえます。現在、現実的に考えられているのが、厚生年金の適用拡大や年金の受給開始年齢を拡大することが検討されています。これをオプション試算と呼ばれ財政検証と共に公表されました。
具体的には、以下の通りです。
①75歳まで支払い延長
②パート労働者などに厚生年金の適用拡大
このオプション試算を行えば所得代替率は10%ほど改善できるといわれています。どちらに転んでも働く負担というのは上昇してしまう結果になりそうです。
最後に
いかがだったでしょうか?将来、年金額が目減りすることは社会の状況から薄々感じ取ることができましたが、いざ指標として公表されると、悲観的になります。
しかし、ただただ、年金が目減り減っていく状況を受け入れていくことは悲しすぎます。働ける今のうちに将来のためにイデコなど今ある制度を有効活用して、老後対策をうっていきましょう。