令和2年2月より新型コロナウイルスの影響により、多くの企業が売上が減少し、資金繰りを圧迫しています。緊急事態宣言が発動され営業自粛が続きより一層、経営難に陥る事業も増えてしまうのではないかと懸念されています。
政府としても、政府系機関の日本政策金融公庫等のみならず、民間の金融機関に対しても信用保証を利用した融資枠を広げるなど、資金繰り支援に力をいれています。その結果、様々な制度が乱立し、どんな条件が整えばどの制度が使えるのかわからなくなっている事業者のかたも多いのではないかと思います。
今回は日本政策金融公庫をはじめとする政府系金融機関による融資を紹介します。なお、セーフティネット保証など信用保証を利用した民間の金融機関がサポートする融資枠についてはこちらにまとめていますので、参考にしてみてください。
Contents
中小企業の味方の政府系金融機関は日本政策金融公庫と商工組合中央金庫
政府系の金融機関といっても日本銀行など様々な機関があります。今回の新型コロナウイルスの影響により中小企業等への資金繰り支援の中心となるのが、日本政策金融公庫と商工組合中央金庫です。
一般の方には馴染みのない金融機関ですが、中小企業にとってはかかすことのできない金融機関です。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は2008年に国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫の3つの金融公庫が統合して設立されました。
その統合のなごりから小口の事業資金融資や国の教育ローンの取り扱い、地域活性化支援などの「国民一般向け業務」、中期資金融資など「中小企業向けの業務」、食の安全の確保などにつながる「農林水産者向け業務」を事業の柱としています。
また、今回のような新型コロナウイルスなどの大規模災害発生時などにおいては、金融秩序の混乱を回避するための役割を果たしています。
商工組合中央金庫(商工中金)
商工組合中央金庫はもしかしたら「商工中金」のほうが馴染みがあるかもしれません。商工中金は、政府と民間が共同で出資する唯一の政府系金融機関です。
商工中金では、「中小企業の、中小企業による、中小企業のための金融機関」を強く意識した活動を展開しています。国の制度融資を利用した支援のほか、融資だけでは終わらない一気通貫の経営サポートを、地域の金融機関との連携を通じて進めています。
また、地域の金融機関ではカバーできない領域を補う役割を担っています。
日本政策金融公庫と商工組合中央金庫は何が違う??
日本政策金融子と商工中金の概要を説明しましたが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか?簡単な違いをまとめますと以下のとおりです。
一般的には、100%政府系の日本政策金融公庫の方が商工中金に比べ資金を調達しやすいといわれています。また、創業者にとっては、最初の資金調達は日本政策金融公庫の一択となります。
商工中金の利用は、中小企業の更なるステージと考えがちですが、しかしながら、私の実務上の経験では、新型コロナウイルスの影響下においては日本政策金融公庫に断られても、商工中金から資金調達ができたという報告もありますので、万が一日本政策金融公庫から借り入れができなくても商工中金の利用も検討することをおすすめします。
① 経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)の要件緩和
セーフティネット貸付とは?
このセーフティネット貸付とは、社会的、経済的環境などの外的要因により、一時的に売上の減少など業況悪化となっているが中期的には、その業績が回復し、かつ発展することが見込まれる中小企業者の経営基盤の強化を支援する融資制度です。
新型コロナウイルス感染症の影響による特例措置
令和2年2月14日より、セーフティネット貸付の要件が緩和され、「売上高が5%以上減少」といった数値要件がなくなりました。
今後、新型コロナウイルスの影響が見込まれる事業者も含めて融資対象となります。
セーフティネット貸付の内容
セーフティネット貸付の概要は以下のとおりです。
なお、金利については令和2年4月1日時点の貸付期間5年となり、貸付期間・担保の有無により変動します。詳細に関しては日本政策金融公庫に問い合わせしてください。
② 新型コロナウイルス感染症特別貸付
新型コロナウイルス感染症特別貸付の概要
新型コロナウイルス感染症特別貸付は、信用力や担保に関係なく一律金利とし、融資後の3年間まで0.9%の金利引き下げが実施されます。
なお、据置期間は最長5年です。
新型コロナウイルス感染症特別貸付の融資対象
新型コロナウイルス感染症特別貸付の融資対象は以下の通りです。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一時的な業況悪化をきたし、次の①または②のいずれかに該当する方
なお、貸付期間は設備資金の場合20年以内、運転資金の場合は15年以内です。金利は当初3年間は基準金利のマイナス0.9%となり、4年目以降は基準金利となります。ただし、利下げの限度額中小事業1億円、国民事業6,000万円となります。詳細に関しては日本政策金融公庫に問い合わせしてください。
③ 商工中金による危機対応融資
危機対応融資の概要
商工組合中央金庫が、新型コロナウイルス感染症による影響を受け業況が悪化した事業者に対し、危機対応融資による資金繰り支援を実施します。
危機対応融資も新型コロナウイルス感染症特別貸付と同様、信用力や担保に関係なく一律金利とし、融資後の3年間まで0.9%の金利引き下げが実施されます。
据置期間も同様に最長5年です。概要を見て頂いた通り、日本政策金融公庫が行う新型コロナウイルス感染症特別貸付と同様のものです。日本政策金融公庫から融資を受けられない場合に検討してみるといいかもしれません。
危機対応融資の融資対象
危機対応融資の融資対象は以下の通りです。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一時的な業況悪化をきたし、次の①または②のいずれかに該当する方
なお、貸付期間は設備資金の場合20年以内、運転資金の場合は15年以内です。金利は当初3年間は基準金利のマイナス0.9%となり、4年目以降は基準金利となります。
④ 新型コロナウイルス対策マル経融資
マル経融資とは??
小規模事業者経営改善資金融資(通称:マル経)は、商工会議所、商工会、都道府県商工会連合会の経営指導員による経営指導を受けた小規模事業者に対して、日本政策金融公庫等が無担保・無保証人で融資を行う制度です。
新型コロナウイルス感染症の影響による特例措置
令和2年3月17日より、新型コロナウイルス感染症の影響により売上が減少した小規模事業者の資金繰りを支援するため、別枠1,000万円の範囲内で当初3年間、通常の貸付金利からマイナス0.9%引き下げされます。さらに、据置期間を運転資金で3年以内、設備資金で4年以内に延長できます。
なお、適用の条件は上記と同様、最近1か月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して5%以上減少している小規模事業者の方となります。
この制度の利用を考えている方は日本政策金融公庫または商工会議所に確認してみてください。
⑤ 特別利子補給制度(実質無利子)
特別利子補給制度の概要
こちらは令和2年度の補正予算の成立が前提となります。上記で紹介した新型コロナウイルス感染症特別貸付、新型コロナウイルス対策マル経融資、商工中金の危機対応融資により借入を行った中小企業者等のうち、売上高が急減した事業者などに対して、利子補給が実施されます。
結構な方が勘違いされているみたいですが、決して上記で紹介した融資支援自体が無利子であるわけではありません。この制度を利用することで、実質無利子となります。また、実質無利子となるのは当初3年間のみとなります。
特別利子補給制度の適用対象
特別利子補給制度の適用対象ですが、日本政策金融公庫等の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」「新型コロナウイルス対策マル経融資」もしくは商工中金等による「危機対応融資」に借入を行った中小企業者のうち、以下の要件を満たす方となります。
なお、令和2年1月29日以降に、日本政策金融公庫等から借り入れを行った方については、上記の適用要件を満たす場合には本制度の遡及適用が可能となります。
最後に
いかがだったでしょうか?上記以外にも生活衛生関係の事業者向け融資制度など新型コロナウイルス対策のための融資制度が準備されています。資金繰りが困難になる前に問い合わせをしてみてください。
また、資金繰り改善の王道は回収サイトを短くし、支払いサイトを伸ばすことです。回収は難しいときですが、支払いサイトを伸ばす対策案もありますので、参考にしてみてください。
税理士として、節税対策や税務申告書の作成のみならず、このような経営難に陥った場合における情報提供や融資がスムーズに行われるためのお手伝いをすることも使命だと考えております。
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