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齋藤孝一著 決算書は役に立たない! 経営計画会計入門の読書レビュー

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2019年9月11日に私の恩師であり、尊敬する税理士の一人である齋藤孝一先生「決算書は役に立たない!経営計画会計入門」を発刊されました。

企業経営に必要な経理知識の中心に「決算書」が存在することが常識とされている。

しかし、決算書は、過去の成績を比較可能なものとして表現したものであり、経営のためには、むしろ、未来を見据えた会計が重視されなければならないということが、著者の主張である。

本書では、過去の結果を示す決算書に代表される制度会計と、将来の経営のために有用な経営会計(管理会計)を対比させ、未だ中小経営者になじみの薄い経営会計の考え方を明らかにするものである。

「BOOK」データベースより

決算書や会計という言葉を聞くと拒否反応を起こす経営者の方や社会人の方もいらっしゃいますが、タイトルにあるように入門書に相応しい内容です。かといっても目から鱗な情報も多いので会計業界に携わる方にもおすすめです。

今回は、入門者だけではなく、ぜひ税理士の方にもおすすめしたい一冊である「決算書は役に立たない!経営計画会計入門」を紹介します。

「決算書は役に立たない! 経営計画会計入門」から学べること

なぜ決算書を作成する必要があるのか?

そもそもなぜ決算書を作成しなければいけないのか?簡単に言ってしまえば、法律で決まっているからです。

もっといえば、企業は納税義務があるために税務署に、融資のために金融機関に、上場会社であれば株主へと第三者に対し、企業の内容を公表する術が決算書の作成なのです。

ですので、ある企業の決算書を作成するために100人の税理士がいたら100とおりの決算書ができてしまっても困りますので、恣意性の排除や比較可能性を保つために企業会計原則に基づいて作成する必要があるのです。

決算書は外部向けの資料であって経営に役立つ内部資料ではない

上述のとおり、決算書は外部向けに提出資料であり、内部(社長・従業員など)向けに作成した資料ではありません

決算書を読み解くことも大事ですが、決算書といくら睨めっこしても経営に役立つ情報を得ることはできません

なぜなら、決算書は過去の企業の運営成績を表す成績表みたいなものであり、決して将来を表す指標ではないからです。

「経営」に役立つ会計で経営計画を作ろう

では、どのような情報であれば経営判断として役に立つのでしょうか?内部者向けの会計として定義しているのが経営会計(管理会計とも言われることもあります。)なのです。

細かい説明は本書に書いてありますので、割愛しますが、通常の決算書を作るための制度会計は引き算で計算していきますが、経営会計は掛け算で計算していくこととなります。

上図は本書で登場する図式ですが、これを元に経営に役立つ経営計画を作成していきます。目から鱗な情報が満載です。

正直、これは明日から私の仕事でも活かしていきます。

会計・簿記はどうしても苦手!そんな方でも理解できる「アニメーション会計」

会計の必要性は分かっているけどどうしても理解できづらい・・・という方には朗報です。本書では限界利益や企業価値など難しい用語は一切でてきません。

むしろ、平成21年に登録商標されているアニメーション会計が採用されています。要は文書で理解するのではなく、パラパラ漫画のようにページをめくれば取引の動きが理解できるようになっているので、これから簿記のイロハを学びたいという方にはおすすめな入門書です。

相変わらず、面白いアイデアを毎回登場させてきます。だからこそ尊敬できる先生なのですが。

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さいごに

税理士は決算書を作成するプロ 企業の経営戦略家ではない

大手専門学校のパンフレットに税理士は企業のホームドクターという表現をよく見かけます。

その理由としては企業の財政状態や業績を一番分かっている税理士は、企業の経営戦略や銀行から融資を受ける相談、社長の愚痴まで幅広く相談される立場にあるからです。

しかし、多くの税理士は税金の計算や企業の財政状態を表す貸借対照表【B/S】と企業の業績を表す損益計算書【P/L】を企業会計原則に基づいて作成するのがプロであって、企業の経営戦略家ではありません

本当の企業のホームドクターを目指すなら管理会計の視線が重要

一般的な月次監査では前期に対してどうなのか?などのレベルしか助言していない税理士が多くいます。このような税理士は今後のAIの発展などによる代替えにより淘汰されていくでしょう。

経営者が期待するホームドクターであるならば、法に従って作成した決算書ではなく、あなた独自にの会計指標に基づいた表や図を用いて助言した方がよっぽど有意義な情報提供になるでしょう。

その情報提供のヒントが隠されているのが本書だと思います。なお、齋藤先生の代表作としてはこちらも有名ですので、こちらもおすすめです。

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