税理士試験に合格するためには簿記論・財務諸表論の会計科目2科目と税法科目3科目に合格する必要があります(税法科目のうち法人税または所得税は必須)。
多くの受験生が簿記論・財務諸表論を科目合格してから税法科目にチャレンジしていくと思いますが、そこで迷うのが会計科目合格後どの税法科目からチャレンジしていくかです。
多くの受験生は実務に直結する税法科目を選ぶ傾向があります。しかし、この考え方は税理士試験に合格するためには得策ではありません。今回はその理由をお伝えします。
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税理士試験は税法科目の選択で最短合格できるか左右する
税理士試験は11科目のうち5科目に合格しなければならない試験
税理士試験の基本的知識として、税理士試験の試験科目は会計科目2科目と税法科目9科目の11科目あります。そして、冒頭で述べたとおりにその11科目のうち5科目に合格しなければなりません。
そもそも、税理士試験ってどんな試験なの?というあなたは上の記事が参考になります。
税法科目の選択があなたの受験期間を左右する
上記の表は、税理士試験の専門学校が公表する各科目の勉強時間の目安です。表を見て頂ければ判ると思いますが、所得税・法人税法は600時間、酒税法・国税徴収法は150時間と科目ごとで勉強時間で4倍もの差があります。
注意して欲しいのですが、酒税法・国税徴収法が他の科目に比べ、簡単で合格しやすいわけでもなく、上記の時間もあくまで目安なので、参考程度で受け止めて下さい。
このように税法科目の選択により、あなたの税理士試験における勉強時間を大きく左右します。また、税法科目の選択を適切に出来るか否かによりあなたが合格出来るか左右するといっても過言ではありません。
選択税法科目の人気の組み合わせは法人税法・消費税法・相続税法
税理士試験を受験している人・これから受験しようとしている多く人が考える税法科目のプランが法人税法・消費税法・相続税法の組み合わせでしょう。
なぜなら、この上記3つの科目は会計事務所における実務で活かせるからです。
法人税法は所得税法に比べ、四六時中実務に活かすことができる
税理士事務所のクライアントの多くが中小企業と個人事業者です。法人税法は中小企業の会計業務や決算において欠かすことのできない税法です。
個人事業者の場合、当然ながら、所得税法の知識が役に立ちますが活躍の機が個人の確定申告時期(2月から3月の時期)しかないため、法人税法に比べ活用の期間が多くありません。
一方、法人税法であれば、各中小企業により決算期にばらつきがあるため、四六時中、知識を活かすことができるため、所得税法に比べ、受験生に人気があるようです。
今、一番ホットな税法 消費税法も税理士試験受験者に人気
2019年10月から10%増税や軽減税率の導入がある消費税法。
この消費税法も中小企業や個人事業者の会計業務や決算に欠かすことのできない税法です。
実は、この消費税法は税理士がクライアントから訴えられる可能性が高い税金の一つです。
例えば、こまかい内容は省略しますが、消費税の特徴は還付を受けることができる税金で、税理士の判断ミスで本来、還付を受けることが出来たはずなのに、税理士のせいで還付が受けられなかったなど、知識があるかないか大きく納付税額などが変わる税法でもあります。
このリスクを抑えるために消費税法が受験生の中で人気がある税法の一つです。
法改正により身近な税金となった相続税法 その人気の本当の理由とは
2016年以降、基礎控除が引き下げられたことにより、今まで以上に身近になった相続税法。ワイドショーなどでも取り上げられることで、多くの方が関心が強い税金の一つです。
以上のことも相続税法が人気の理由の一つなのですが、そのほかに人気の理由があります。それは、相続税の申告報酬が他の申告業務の報酬に比べ、はるかに高いことです。
一般的に、多くの税理士が遺産財産価格の数%を申告報酬として頂いていることから、税理士にとってはおいしい仕事の一つなのです。とても不謹慎なのですが・・・。
実務に役に立つことと試験に合格することは切り離した方がいい
以上のように法人税法・消費税法・相続税法は実務においても非常に役に立つことから、税理士試験の受験者に人気である科目です。
人気があるが故にベテラン受験生が多くいる
税理士試験は相対評価の試験です。上位10%の受験生が合格する試験です。このように考えると結果的に多くの受験生が残念ながら90%の不合格の枠に入ることとなります。
90%という枠ですから、同じ科目で何回も受験するベテラン受験生が多く存在します。もしあなたが、とある科目にチャレンジしようと考えている場合、ライバルの多くが何度も受験をしているベテラン勢を相手にしているわけですから、彼等を差し置いて10%以内に入ることは至難の業なのです。
何度も試験に不合格になっているわけだから、もともと力がないのでは?と考える人もいることでしょう。しかし、税法科目となると会計科目に合格してからチャレンジする受験生が多くなります。
また、相続税・法人税ともなると4科目合格してくすぶっている受験生もいるのです。ですので、毎年不合格している受験生全員が決して力が無いわけではないのです。
実務は実務・試験は試験と割り切りも大事
法人税と所得税のいずれかは必須科目のためいずれ合格しなければならないのですが、相続税と消費税法は必須科目ではないので、受験勉強してみて相性が悪いようなら、思い切って違う科目にチャレンジしてしまうのも手です。
実務に必要だから法人税法・相続税法・消費税法で合格したい考える人もいるでしょう。しかし、こだわったあげく、税理士試験に合格出来ないようであれば本末転倒です。
試験は試験と割り切り、税理士になってから本格的に勉強しても遅くはないでしょう。
税理士試験で覚えたことは残念ながら実務では役に立たない
あなたが覚えた条文はスマホで調べられる時代
最後は、酷な内容で締めます。四六時中、暗記した税法の条文や手が壊れるほど電卓を叩いて挑んだ計算問題は実務ではほとんど役に立ちません。
なんせ、条文なんて暗記しなくてもスマホで調べればすぐ判りますし、残念ながら改正が入ってしまえば、せっかく覚えた税法も過去の遺産になってしまいます。
また、計算問題もぶっちゃけ会計ソフトに打ち込んでしまえば、税金を計算をしてくれます。
もっといえば、税理士試験はマニアックな試験ですから、実社会ではほとんど起きないような事例が問題で出るため、超イレギュラーな計算ができても、実社会では使う場面はほぼないでしょう。
試験と割り切ってチャレンジしやすい税理士科目にチャレンジしよう
であるならば、暗記が得意なら計算問題が出ない国税徴収法や仕事が忙しいなら、合格レベルに達するためにとりあえずボリュームが少ない酒税法にチャレンジするなど融通な考え方で税理士試験にチャレンジしていきましょう(決して酒税法が合格しやすい科目ではありません)。