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税理士が喜ぶ法人成り 知らないと損する法人成りの7つのデメリットとは

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フリーランスなどの個人事業主の方が売上が1000万円を超えると、原則その年の2年後から消費税を納めることとなります。

もし、顧問税理士がついていれば、もしかしたら個人事業主から法人に成り代わる「法人成り」を勧められるかもしれません。

その理由は、法人成りすれば、原則、資本金が1000万円未満であれば、法人の開業事業年度を含める2期がさらに消費税が免除されるからです。

確かに、法人成りすることで、消費税が免除されることは、節税対策としても大きなメリットといえます。

しかし、その目の前の消費税の免税の誘惑に誘われた挙句、後々、法人成りして「こんなはずじゃなかった・・・」というクライアントがいることも事実です。

そのような法人成りしたことで後悔しないように、法人成りのデメリットを紹介します。

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法人成りを税金中心で考えると失敗する可能性がある

節税策に溺れて他のデメリットを見失うな

しかし、インターネットで「法人成り」と検索するとメリットばかりが注目されており、意外とデメリットを知らないまま、法人成りしてしまう個人事業主が結構います

例えば、法人成りのメリットとしては以下のようなものが挙げられます。

  • 事業主自らの役員報酬が経費となる
  • 開業事業年度から2期は消費税が免税となる
  • 赤字を10年間、繰越控除できる
  • 生命保険で節税ができる
  • 高所得になれば、法人税の方が所得税よりも低い

確かに、法人成りにすることで上記のような節税ができることは大きなメリットです。しかし、節税策を中心に考えてしまうと危険なケースもあります。

とくに、税理士の中には、「常に税金を1円でも安くしたい」と考える人がいます。税金を安くしてあげたいという思いから税金を中心に物事を考えてしますと、税金以外のデメリットを見失ってしまう可能性があるのです。

意外と知らない!?法人成りの6つのデメリット

法人成りのデメリットを羅列すると以下の通りになります。

  1. 会社設立費用がかかる
  2. 法人成りの手続きで思わぬ税金が発生する可能性がある
  3. 事業者のお金と法人のお金を厳密に分けなければならない
  4. 会計・税務が複雑となる
  5. 赤字でも税金がかかる
  6. 社会保険の負担が大きくなる可能性がある

下記では、それぞれの法人成りにおけるデメリットの詳細を確認していきましょう。

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実はメリットよりも怖い!? 法人成りの6つのデメリットとは

①会社設立費用がかかる

個人の方が事業を開始するうえでは、税務署に「個人事業の開業届」の書類を出せば足ります。つまり、無料で事業を開始することができます。

しかし、法人となるとそういう訳にはいきません。当然ですが、個人事業主が法人成りするためには、その事業の受け皿となる法人を作らなければなりません

今でこそ、会社設立freeeなどで法人が作り易くはなりましたが、それでも多くの人は司法書士などの専門家に依頼しなければなりません。

会社設立における費用ですが、最低でも定款認証手数料5万円、登録免許税15万円は必ずかかるため、さらに専門家に依頼するとなると、トータルで30万円オーバーしても、おかしくはありません。

②法人成りの手続きで思わぬ税金が発生する可能性がある

念願の法人を作成しても、それだけでは事業を開始することはできません。

例えば、個人事業で飲食店を営んでいたとして、個人事業時代に調理器具を購入した場合、法人に調理器具使用させる権利を与えなければなりません。

一般的には、その調理器具をリースか譲渡によって移転しますが、多くの個人事業主が100%の株を所有する法人を作るため、どうせ自分の法人だからと無料で資産を譲渡してしまうと、

法人には資産の受贈益

個人にはみなし譲渡課税

と思わぬ課税が発生する可能性があるのです。

また、すでに個人事業主が消費税の課税事業者に該当した場合には、調理器具の個人から法人への譲渡は消費税の課税対象となり、思わぬところで消費税が発生してしまいます。

③事業者のお金と法人のお金を厳密に分けなければならない

個人事業主の場合には、事業資金のプライベートでの使用についてはただ必要経費にならないだけで、事業のお金を自由に使うことができます

一方、法人の場合には、そういう訳にはいきません。

法人で得た資金を個人へとお金を移すためには、役員報酬として支給します。→「事業主自らの役員報酬が経費となる」は法人成りのメリットで紹介

その役員報酬は給与所得に該当するため、もちろん所得税の対象となります。

今までの感覚で、法人の資金を勝手にプライベートなことに利用してしまうと、役員貸付金として処理され認定利息が発生してしまい、法人税が増えてしまう可能性があります。

最悪な場合、個人利用が役員報酬として認定されてしまい、法人税法上の損金に認められず、利益が増え法人税が発生する可能性があります。さらには源泉所得税が発生するわ、所得税が発生するわなどのダブルパンチが生じてしまいます。

④会計・税務が複雑となる

個人事業主の対象となる所得税ですが、基本的には収入金額から必要経費を差し引いて事業所得を計算します。

ぶっちゃけ、税理士に依頼しなくても、会計ソフトfreee(フリー)弥生会計を利用してしまえば、事業所得の計算はできてしまい、簡単に所得税の申告書を作成することができてしまいます。

一方の法人の場合には、企業会計上の利益を税務会計上の利益に置き換える必要があります。

そのために様々な調整を行わなければならず、ある程度の専門知識を要します。

⑤赤字でも税金がかかる

個人事業主の場合には、所得税と住民税が発生します。

所得税の計算ですが、給与所得や事業所得を合算した総合所得から基礎控除や扶養控除などの控除項目を差し引いて、課税所得を計算します。

詳細を知りたい方はこちらを参考にしてみて下さい。

総合所得より控除金額が上回る場合には、所得税や住民税は原則、発生しませんので納付すべき金額は0円となります。

一方の法人税ですが、専門用語を使えば、益金から損金を差し引いて課税所得を求めますが、とりあえずここでは、所得税との比較をしたいため収入金額から経費を引いて課税所得を算出すると考えて下さい。

個人事業主の場合は、課税所得がマイナスであれば所得税・住民税は発生しませんが、法人の場合は、課税所得がマイナスであっても、均等割という各都道府県の法人県民税・市町村の法人市民税が課されます

均等割の金額は、各都道府県・市町村で異なりますが、令和元年11月時点で私が住居する愛知県名古屋市では、愛知県に対し21,000円、名古屋市に50,000円となります。

⑥社会保険の負担が大きくなる可能性がある

個人事業主の場合は、常時雇用する従業員が5人未満なら健康保険や厚生年金保険への加入は任意となっています。

なお、加入しない場合には、各個人が国民健康保険・国民年金により社会保険を負担します。

一方、法人の場合には、従業員数にかかわらず、健康保険や介護保険、厚生年金保険への加入が義務付けられています。

さらに、健康保険などの社会保険の徴収ですが、法人と従業員で折半する形になるため、仮に社会保険料が10,000円だとしたら、法人が5,000円・従業員が5,000円負担するという形になります。

私見ですが、法人成りにして後悔する多くの事業者がこの社会保険料の負担です。

個人事業主であれば、従業員の社会保険料は各個人で負担で良かったのに、法人にしたばかりに従業員の社会保険料を半分負担しなければならない訳ですから。

私自身は法人成りの相談があれば、法人成りシミュレーションを実施していますが、所得税と法人税だけの比較をすれば、法人成りの方が有利な場合があります

しかし、社会保険料も含めると法人成りの方が不利となるケースが結構あるのです。

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誰にもいえない税理士の本音 法人成りしてもらった方が税理士は喜ぶ

ここからは税理士としての私見です。全ての税理士の意見を反映しているわけではないので参考程度で読んで頂けると幸いです。

一般的に、個人事業主のクライアントと法人のクライアントのどっちが税理士的には嬉しいかというと法人のクライアントの方だと思います。

理由としては以下のとおりです。

  • 決算期が分散できる
  • 顧問料を高めに設定できる
  • 顧問料以外のコンサルティング料を得ることができる

理由① 決算期が分散できる

税理士は季節労働者です。年末から年末調整から始まり、個人の確定申告そして、3月決算申告へと続いていき、夏から秋は閑散期となる職業です。

繁忙期の中で大きなイベントはやはり個人の所得税の確定申告でしょう。所得税法では、その年の所得税をその年の翌年3月15日までに申告しなければなりません。

ですので、個人事業主のクライアントが多い税理士は3月は怒涛の忙しさでしょう。

しかし、法人の場合は決算期を自由に選ぶことができますので、業務を分散させることができるます。

余談ですが、これから法人を作ろうと考えている人は決算期を夏にもっていきましょう。なぜなら、税理士も一人の人間ですので、繁忙期よりも閑散期の方が紳士に相談にのってくれるからです。

理由② 顧問料を高めに設定できる

法人成りのデメリットで記載したように、法人の会計は個人事業の会計・税務より煩雑になります。

さらに決算においては、申告書のみならず、決算書・内訳書・事業概況書を作成する必要があります。

ですので、個人事業主よりも法人の方が業務が多いのですが、顧問料は業務量に比例して設定されることが多いので、一般的に個人事業主よりも法人の方が顧問料が高めに設定されます。

もし、個人事業主が法人成りにしたいという相談を受ければ、税理士にとっては、絶好の値上げのチャンスとなります。

しかし、本音で言えばなんでも慣れですので、個人事業主が法人成りしても、個人的には苦ではないので法人の方が大変という感覚はありません。→個人の感想です・・・

理由③ 顧問料以外のコンサルティング料を得ることができる

法人になると会社法の縛りにより株主総会を開く必要があり株主総会議事録の作成やその法人の株価評価など、個人事業にはない新たな業務が発生することになります。

また、法人の方が個人事業より節税方法が豊富なので、新たな提案する機会が多くなります。

ですので、税理士にとっては、新たな提案をすることでコンサルティング料を得る機会が多くなると言えます。

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法人成りするならしっかりシミュレーション!頼れる税理士を探そう

以上のように法人成りすることによるデメリットを紹介しました。

もちろん、法人成りすることは信用力が上がることや事業承継の場面で様々なメリットがありますので、法人成りすることを反対する記事ではありません。

しかし、ただ消費税が免除されるからという安易な理由で法人成りしてしまうと思わぬ負担が生じることがあるのです。

これから法人成りしたい、事業を始めたいけど個人事業主で行うべきか法人で行うべきを決めるのであれば、税理士を始めとする専門家に相談してみましょう。

しかし、上述のとおり、何でもかんでも法人成りを勧める税理士は危険です。法人成りする上でのシミュレーションをしっかり行った上で、相談にのってくれる税理士を選びましょう

税理士事務所の選択は今後の事業を遂行する上で重要な要素を占めるので、税理士ドットコムような税理士を紹介してくれるサービスでなるべき多くの税理士を比較し、ベストパートナーを探しましょう

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