令和2年2月に新型コロナウイルスが蔓延し、人体への影響のみならず、経済にも大きなダメージを与えつつあります。特に飲食店関係をはじめとする業界は緊急事態宣言により店舗を閉めざるおえない状況下にあり、売上をあげることもできないにも関わらず、家賃等をはじめとする固定費を払い続けなければなりません。
前回の記事において、日本政策金融公庫・商工中金の政府系金融機関がおこなう融資支援制度、信用保証協会を利用した民間の金融機関による融資支援制度を紹介しました。
融資支援においては、様々なメディアでも取り上げられ、多くの事業者に認知されているのではないかと思われます。
しかしながら、借入をおこすことは売上を補うための有効な資金繰り対策ですが、資金を一時的に獲得しても、通常通りの固定費を払い続けては、早い段階で資金が底につく可能性があります。今回は、資金調達だけではなく、固定費を一時的でもおさえる支援策を紹介します。
Contents
納税猶予・納税期限の延長
① 税務申告・納税期限の延長
昨今の新型コロナウイルス感染症の各地での拡大状況に鑑み、そして確定申告会場の混雑を解消する観点から、感染拡大により外出を控えるなど期限内に申告することが困難な方について、期限を区切らずに4月17日(金)以降であっても柔軟に確定申告書を受け付けてくれることとなりました。
ここでいう柔軟に確定申告を受付というのは、申告書の作成または来所することが可能になった時点で税務署へ申し出たら、特段の手続きもなく申告期限延長の取り扱いをしてくれます。基本的には、延滞税・利子税は発生しません。
また、法人税・法人の消費税の申告・納付についても新型コロナウイルス感染症の影響により、法人がその期限までに申告・納付ができないやむを得ない事由がある場合には、申請することで期限の個別延長が認められます。
なお、申告期限が無くなるだけで納税義務が無くなるわけではありません。日本政策金融公庫から融資を検討している場合には、納税義務を果たしている事業者に融資することが大前提のため、延長したから申告しないと考えると融資が受けられない可能性がありますから、できるなら早めに申告をしましょう。
日本政策金融公庫の融資の財源は税金なので、当然ですが・・・
② 事業収入が減少する場合の納税猶予(国税・地方税)の特例
原則すべての税において、令和2年2月以降、事業収入が前年同月比と比べ20%以上減少した場合には、無担保かつ延滞税なしで納税が1年間猶予が認められます。
ただし、こちらは関係法案が国会で成立することが前提とはなります。
また、納税者において個別の事情があると認められる場合には、原則、1年間猶予(状況に応じてさらに1年間猶予)が認められます。なお、個別の事情とは以下のようなものを指します。
- 災害により財産に相当な損失が生じた場合
- 本人または家族が病気にかかった場合
- 事業を廃止し、または急死した場合
- 事業に著しい損失を受けた場合
財産の差し押さえや換価(売却)も猶予されますので、まずは電話等で所轄の税務署に相談してみましょう。
固定資産税等の軽減
今回、紹介する対策案の中で唯一の税金を減少できる対策案です。条件さえ整えば固定資産税の負担がゼロになる可能性があるので、是非チェックしてみてください
③ 固定資産税・都市計画税の減免
中小企業・小規模事業者の税負担を軽減するため、事業者の保有する設備や建物等の2021年の固定資産税及び都市計画税を、事業収入の減少幅に応じ、ゼロまたは1/2となります。
なお、2020年の固定資産税及び都市資産税は、新たな特例措置(事業収入が前年同月比20%以上減)により、1年間納税猶予可能となります。
減免の対象(いずれも市町村税 東京都23区は都税)
- 設備等の事業用家屋及び償却資産に対する固定資産税(通常、取得額または評価額の1.4%)
- 事業用家屋に対する都市計画税(通常、評価額の0.3%)
減免率は以下のとおりです。
任意の連続した3か月間ですので、あてはまる期間があれば、ぜひ利用しましょう。問い合わせ先は中小企業庁 事業環境部 財務課(03-3501-5803)になります。
④ 固定資産税の特例(固定ゼロ)の拡張・延長
現在、中小企業・小規模事業者が新たに投資した設備については、自治体の定める条例により、投資後3年間、固定資産税が免除されています。
新型コロナウイルス感染症の影響を鑑みて、本特例の対象に事業用家屋と構築物(門・堀・看板など)を追加するとともに、2021年3月末までとなっている適用期限を2年間延長されることとなりました。
なお、導入促進基本計画の詳細についてはこちらにて確認してください。問い合わせ先は中小企業庁 経営支援部 技術・経営革新課(03-3501-1816)になります。
厚生年金保険料等の猶予制度
事業を行う上で、税金以上におもくのしかかるのが社会保険です。猶予制度を利用することにより、納付が猶予されますので、資金繰りに不安がある方は利用を検討しましょう。
⑤ 厚生年金保険料等の換価の猶予
厚生年金保険料等を一時に納付することにより、事業の継続等を困難にするおそれがあるなどの一定の要件に該当するときは、納付すべき保険料等の納期限から6か月以内に管轄の年金事務所へ申請することにより、換価の猶予が認められる場合があります。
⑥ 厚生年金保険料等の納付の猶予
次のいずれに該当する場合で、厚生年金保険料等を一時的に納付することが困難な時は、管轄の年金事務所を経由して地方(支)局長へ申請することにより、納付の猶予が認められる場合があります。
納付の猶予を受ける条件
- 財産について災害を受け、または盗難にあったこと
- 事業主またはその生計を一にする親族が病気にかかり、または負傷したこと
- 事業を廃止し、または休止したこと
- 事業について著しい損失を受けたこと
なお、「換価の猶予」または「納付の猶予」が認められた場合、以下のような恩恵を受けることができます。
- 猶予された金額を猶予期間中に各月に分割して納付
- 財産の差押さえや換価(売却等現金化)が猶予
- 猶予期間中の延滞金が一部免除
この猶予制度を利用するには、年金事務所へ申請書の提出が必要となりますので、最寄りの年金事務所に相談してみてください。
電気・ガス料金の支払猶予等の要請
⑦ 電気・ガス料金の支払猶予等の要請
これは国からの要請レベルにはなりますが、個人または企業にかかわらず、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、電気・ガス料金の支払いに困難な事情がある方に対しては、その置かれた状況に配慮し、料金の未払いによる供給停止の猶予など、電気・ガス料金の支払いの猶予について、柔軟な対応を行うことを要請しています。
水道光熱費の支払にお悩みの方はまずは一度、契約されている業者に連絡し相談してみましょう。
最後に
いかがだったでしょうか?今回は新型コロナウイルス支援制度の中で、経営を行う上で一時的でも固定費を減少させるための支援策を紹介しました。
2020年5月からはいよいよ持続化給付金の手続きが開始されます。支給要件などをまとめましたので、ご参考にしていただけると幸いです
資金繰りを改善する原則は、回収サイトを短めにし、支払いサイトを伸ばすことです。新型コロナウイルス感染症の影響に売上等を回収することは困難な状況ですが、以上の策を使えば、多少なりとも支払いサイトを伸ばすことが可能となります。
資金繰りを改善するために借入を起こすことも有効です。こちらも参考にしていただけると幸いです。